自宅のチョウバエ根絶作戦

チョウバエのように舞い、蚊のように刺す男が綴るブログ

 このところ小さな黒点が自宅のお風呂場で宙を舞い、そして壁にとまっている。近寄って観察すると正体はチョウバエという害虫であった。これは水回りの汚れから発生する典型的な虫である。つまり虫から浴室が汚いと言われているようなものである。誠に遺憾である。自分の不精を棚に上げてチョウバエへの敵愾心が湧き上がった。徹底駆除である。虫にとってお門違いも甚だしいが、今日はそんな一般住宅のチョウバエ対策について書きたい。しばしお付き合いいただければ幸いである。

1. まずは掃除

 さて、チョウバエの駆除方法とは何か?現場によって少しずつ異なるが基本は掃除に尽きる。ではどこを掃除すべきか?具体例を挙げれば膨大な数になる。従って今日は一般住宅の例に絞り込みたい。最初に見ておきたいのがお風呂場であり、中でも排水口の周りである。

 排水口と言っても洗面台、湯船、そして浴室床の3ヶ所がある。どれを指すのか?全てであるが、特に注意したいのは床にあるものであろう。大抵は蓋がされており、これを開けるとゴミ受け(ヘアキャッチャー)が姿を現す。そのゴミ受けには髪の毛と一緒に気持ちの悪い「茶色っぽいぬめり」が付着しているはずである。その光景が目に浮かんだ方もいるかもしれない。いささか気分を害されたかもしれないが話を続ける。 その「茶色いぬめり」とは一般にスカムや汚泥など呼ばれる水回りの汚れである。

 この汚泥ともスカムとも呼ばれるぬめりこそがチョウバエの幼虫の餌になるのである。もうお分かりであろう。これがチョウバエの発生原因であり、その除去が駆除への第一歩である。またゴミ受けのみならず、その下にあるトラップ(白い筒状、左右に少し捻って外す)も同様にぬめりが付着しているはずである。 排水口の周りにも同様であろう。あまり気の進まない作業であるが、ひとまずこの掃除から始めていきたい。 なお、このぬめりが取れるのであれば掃除の方法はこだわらない。メラミンスポンジでこする、それっぽい液に浸けて落とす、手段は様々である。

 ただ掃除の際に独特の異臭が立ち込めることは覚悟したい。まるで硫黄臭である。お風呂場だけに硫黄泉で嗅ぐソレだと思い込もうとしたが、それは無理があり過ぎた。百歩譲って同じニオイだとしても、発生の過程に決定的な違いがある。そもそも温泉に失礼である。 話を元に戻す。このように掃除の最中は換気扇をフル稼働させたい。加えて掃除で生じたゴミを捨てるタイミングも重要である。できればゴミ収集の前日が望ましい。また清掃の目安を上の写真で示す。分かりやすく言えば素手で触っても抵抗が無いくらいの綺麗さがよいだろう。

 続いて浴槽の排水口であるが、奥の奥まで掃除することが難しい。排水口周りの汚れを落とし、適当な配管掃除の液体を流し込むくらいであろう。また、排水口には分解可能なパーツがあることもある。その場合は取り外してきちんと汚れを落としておくに限る。

 ここまで書くと洗面台の排水口への対処も想像がつくと思われる。浴槽のそれと同様である。以上である。

 あとはお風呂以外にマークしておくべき場所はキッチンの排水口である。浴室床のそれと同様にゴミ受けが最初に目に入る。次にそのゴミ受けの奥に防臭ワンが見えるはずである。キッチン周りからチョウバエが発生している場合、この側面と裏が地獄の形相を呈していると思われる。試しにメラミンスポンジでこすり、そして得体の知れない色をした何かが付着すれば確定だろう。気分を害するニオイとセットで対応を求められるが、ここは我慢してきちんと掃除をしたい。

2. 殺虫剤の力を借りたい場面

 しかし、中には掃除が難しい場所もある。例えば洗面台やキッチン流し台のオーバーフロー防止穴である。飲食店の厨房でも時々目にする事例であるが、中に水と一緒に汚れが入り込み、それが長年堆積してチョウバエの発生原因になっていることもある。狭い場所なので奥に手が届かず、害虫の温床になっていると分かっていても手が出せない。もどかしいが、そんな時こそ殺虫剤の出番である。

 今回はお風呂のチョウバエ対策に使いやすいものをご紹介したい。コバエ用ムースFTである。名前の通り殺虫剤の混ざった柔らかい泡、つまりムースを出すもので上の写真のようにオーバーフロー防止穴などに注入するような使い方ができる。ムースなので穴の隙間を適当な布なので塞ぎながら注入すると狭い空間にも殺虫剤と泡を充満させることができる。

 コバエ用ムースFT注入施工後の様子。なお泡と言えば汚れも一緒に落としてくれると期待しがちである。しかし残念ながらその効果は無い。汚れは残されたままである。その代わり殺虫剤を散布した後にチョウバエが発生しづらくなる効果はある。詳細は商品の詳細ページに譲るが、要は昆虫の幼虫が正常に成長できない(簡単に言えば脱皮する時に皮をうまく脱ぐことができない)成分が長時間残るのである。恐ろしい響きであるが何のことは無い。脱皮することの無い(=作用する部位が無い)人間にとっては安全性の高い成分である。そもそも人と虫とでは体の造りは根本的に異なる。安心してご利用いただきたい。

 しかし殺虫効果と洗浄効果の両方が欲しいという声もあるだろう。そんな方にはチョウバエバスターをお勧めしたい。これは最初顆粒状であるが水と反応してどろんとした泡になる。排水口の周りへ投下するにはもってこいである。そしてその泡はぬめりといった汚れを落とす効果とチョウバエなどの虫を殺虫する効果とを併せ持つ。つまり発生原因対策と駆除を一度に行うことができる。

 なお水と反応して泡になると書けば、モコモコと勢いよく泡が盛り上がって来て、泡だらけになる光景を想像するかもしれない。しかし使ってみるとチョウバエバスターの粒を落とした水面から広がるように緩い泡が広がっていくような感じである。ここは期待外れという声もあれば良い塩梅という声もある。それはさておき、繰り返しになるが排水口のトラップや防臭ワンを外した後に撒くといった使い方がオススメである。

3. 最後に注意点

 コバエ用ムースFTは他のスプレーと同様に可燃性のガスを利用しているため火気厳禁である。具体的にはキッチンのコンロの火、またガス給湯器などである。掃除が終わってお茶やコーヒーで一服したいところであるが、その前に換気を徹底(1時間ほど)をしていただきたい。またこれからの季節はストーブの利用も始まる。暖房機器の有無にも注意が必要である。

 なお、排水周りの掃除に関して塩素系の洗剤を利用する方もおられるだろう。ここで気になることは今回ご紹介した殺虫剤を撒く前後でこれらの洗剤を使用すると有毒ガスが発生しないかどうかである。結論として問題は無い。ただしチョウバエバスターは塩素系や酵素系の漂白剤と併用・混合すると効果が落ちるようである。そもそも殺虫剤は用法用量に記載されている通り、単独での使用が前提である。洗剤や他の殺虫剤とは混合せず、時間を空けるなどして単体でのご利用をお願いしたい。

 ところで、お風呂でこのような大掃除をするとチョウバエが居場所を失うためか一時的に複数飛び出してくるという経験がある。しかし程なくして姿を消すため心配は無用である。また、こういった対策を講じてもなかなかチョウバエの発生が止まらない場合は何か別の問題があるのかもしれない。そんな時は一度弊社までお問い合わせをいただければ幸いである。さて、お風呂の掃除が終わり、快適なバスタイムを楽しむことができるようになったところで本日は筆を置かせていただきたい。

庭から蚊を根本的にいなくする

蚊の羽音をカーステレオと呼ぶ男の物語

 某日久しぶりに実家へ帰ったところ、待っていたのは庭にはびこる蚊の猛攻であった。長い出張疲れを癒すつもりの帰省であったが誠に遺憾である。急速に心の中に怒りが渦巻いた。瞳の奥にはグルグル巻きの蚊取り線香が映っていたかもしれない。もはや情状酌量の余地は無い。徹底抗戦である。そんな一般住宅の蚊の駆除について本日はご紹介したい。しばしお付き合いいただければ幸いである。

1. 蚊の種類を特定する

 さて、蚊に限らず害虫駆除で大事なことは何か?それは相手の正体を知ることであろう。となれば、まず1匹捕まえて種類を特定しなければなるまい。そう思って庭に躍り出れば、こちらから探しに行くまでもなく蚊の群れが迎えに来た。好都合である。早速一番のろまなものに平手打ちを一撃して身柄を確保した。若干の怒りがこもったせいだろうか。いささか死骸は分解してしまったが、正体を知るには十分な状態でそれは手のひらに残った。

 こうして捕らえた蚊の見た目を観察する。全体的に黒っぽくて、お腹などを中心にところどころ白い縞々模様が入る。これはヒトスジシマカであろう。一般的に蚊と呼ばれるもののの代表格である。では次にこのヒトスジシマカが発生するのはどこか?蚊といえば水のある場所という声が聞こえてくる。正解であるが、もう少し具体的な答えが欲しいところである。 次にそれを考えてみる。

2. 発生場所を突き止める

 まずヒトスジシマカが発生するのは水たまりのような場所である。例えば庭であれば金魚鉢の中、蓮など水辺で育つ花を育てるため水を張ったままの鉢、また植木鉢のお皿に溜まった水などである。他に外にほったらかしたままのバケツやプランターがあればそこに溜まった水、落ち葉や土で排水溝が詰まってしまった洗い場の周りなども挙げられよう。

 これらを踏まえて実家の庭を観察する。親の手入れが行き届いており綺麗だが、蚊の発生しそうな場所が無い訳でもない。中でもひときわ禍々しい雰囲気を放つものがあった。大きな水瓶である。曰く、魚を飼っているのではなく雨水と落ち葉が溜まるに任せているようである。不吉な予感が走る。すぐに中を覗き込んでみた・・・見つけたよ。中から無数のヒトスジシマカが現れた。間違いない。実家の庭ではこの水瓶が蚊たちの根城なのであろう。

 なぜそう言い切れるのか?理由はこの水瓶の中身を見れば分かるに違いない。蚊の幼虫、いわゆるボウフラは水中の有機物を食べて育つ。具体的には落ち葉や泥、金魚鉢では魚が食べ残した金魚の餌なども当てはまる。雨水と落ち葉が溜まるに溜まった水瓶などボウフラの格好の生息地になるであろう。それを踏まえてこの重い水瓶を傾けて中身を適当な水槽の中に出してみた。重い、汚い、臭い、救いようのない作業であったが、その甲斐あって琥珀色をした不思議な水を得ることができた。

 これを丹念に落ち葉、水、そして生息しているであろうボウフラに分ける。細やかな作業であるが虫の研究ばかりしていた学生時代に戻った気分になる。実にすがすがしい。気持ちが若々しくなった気がする。しかし、ふと水槽の水面に映る自分の顔を見れば、すっかり年を重ねたそれである。現実とは残酷である。

 話を元に戻す。こうして分離したボウフラを桶に移して大雑把にカウントした。その数、200匹近く。おぞましい。詳細な写真を掲載したいところだが、見ると気分を害される方がいるかもしれない。私もお叱りを受けるかもしれない。上の写真が限界である。なお、ヒトスジシマカの雌が一生に産む卵の数は数十個から100個ほど。仮にこの200匹近いボウフラの半数、100匹が雌になるとすれば将来的な蚊の発生数は数千から1万。こう考えれば、水瓶1つの掃除といえど実に有意義であったと言える。

3. 対策の考え方

 さて、こうして得たボウフラはどのように駆除すればよいか?簡単である。彼らは水中でしか生きられない。乾いた地面に水ごと流してしまえばよいのである。残念だったねと言い放ち、そしてカラカラに乾いた排水溝へと流す。傍から見れば、もはやどちらか正義か悪か分からない光景である。

 ところで掃除をした後の水瓶である。せっかく中身を出して綺麗にしても、時間が経つと再び雨水と落ち葉が溜まり元の木阿弥である。定期的に掃除をしなければなるまい。実に面倒であるが、さりとて親に任すには酷である。ここは害虫駆除の世界で得た知識を活用して親孝行すべきであろう。つまり殺虫剤の出番である。最終的に殺虫剤のお話に帰結するのはこのブログの宿命である。

 では今回選ぶ殺虫剤は何か?状況を整理すると、まず水瓶に今後も落ち葉と雨水が溜まりボウフラが再び出現することは避けられない。次にその後を冷静に考える。ボウフラが出現しても即座に影響は無い。その後成長したボウフラが成虫に育って初めて吸血の被害が起こるのである。であれば答えは明白である。成虫になる手前で効く殺虫剤を水瓶の中へ定期的に投下するのである。詳細は商品ページに譲るが、そういった効果を持つものにスミラブ粒が挙げられる。これを使い方に則って撒いてあげればよいのである。実にシンプルである。

4. エピローグ 殺虫剤の使い方は要確認

 最後に余談を紹介したい。汚い水の中からボウフラをふるい分ける作業中のこと、大きなヤゴが見つかった。もちろん人には害が無い。後で掃除の終わった水瓶の中に返してあげてもよかったが1つ問題があった。上記で紹介した殺虫剤(スミラブ粒剤)は昆虫全般に効くのである。このヤゴも例外ではないだろう。トンボになる手前で死亡してしまう恐れがある。これは避けたい。今回は別に水槽を用意して移住させる措置をとったのであるが、殺虫剤を使う上でこのような基本的な知識の理解は極めて重要である。

 殺虫剤の使い方の注意はラベルに記載されている用法用量を見れば分かる。しかし現実はどうだろう。本当に理解があっているのか不安に思うこともあれば、思わぬ勘違いから誤った使い方をしてしまうかもしれない。話題は逸れるが、料理の本を見ただけの知識で夕食を調理した私がとんでもない失敗作を作ってしまったのと同様である。詳しい人に経験を含めて聞いてからすればよかったと思うことは古今東西多々あるであろう。以上より、もし殺虫剤の使い方や選び方にお困りのことがあれば弊社までお問い合わせをと思ったところで本日は筆を置かせていただきたい。

肥料から発生したタバコシバンムシ

植物系の乾燥食品から発生するタバコシバンムシの、ちょっと変わった発生事例。

写真1. 園芸肥料とタバコシバンムシの死骸

 某日、園芸用の肥料からタバコシバンムシが発生した事例に遭遇しました。写真の指先に写っているゴマ粒状のものがタバコシバンムシの死骸です。そして、その上にある円筒形のものが肥料です。

写真2. 今後の参考のためサンプルとしていただいた肥料

 幸いにして現場は経験豊かな弊社ベテラン社員の自宅であり、相談を受けた時には既に欲しい情報が全て揃っていた状態でした。そのため発生源の絞り込みから発見までが非常にスムーズに進みました。以下に問題発生から原因の推定、そして解決までを簡単に振り返ってみます。

写真3. 顕微鏡で観察し、タバコシバンムシと判定された検体

 まず発端は、ある時から玄関および隣接するトイレで毎日シバンムシらしき虫を数匹以上見かけるところから。次に「これはシバンムシで合っているか?」とのことから社内に検体として死骸を持ってきていただき、その結果タバコシバンムシと判断されました。そしてその後も出没は止まらず、また偶然にしては見かける数が多すぎることから、屋内のどこかに発生源があると推察され、具体的に調査していただくに至りました。

写真4. タバコシバンムシ用フェロモントラップ「ドームトラップ」の設置イメージ

 さて、セオリー通りにいけば発生源となり得る乾燥食品、これが多く保管されている台所周りが疑わしいという流れになります。しかし台所では姿を見ないこと、さらに客観的な判断材料として後日タバコシバンムシを対象としたフェロモントラップを設置されていたこと、そしてフェロモントラップでの捕獲が無かったこと、これらの点で台所付近での発生では無いと考えられました。よって調査の範囲を拡大していただくことにしました。

写真5. 袋の中をよく見るとタバコシバンムシが歩き回っている

 そこでシバンムシの姿をよく見る玄関周りに発生源がある、あるいは玄関から出てすぐのところに何か発生源があり、それが扉の隙間などから屋内に侵入しているものと推測して調査をしていただきました。そしてその結果、玄関に保管してあった肥料の袋の中に同じような虫の死骸が見られ、そして詳しく調べた結果、この肥料からの発生と結論付けられました。

写真6. 弊社の顕微鏡机の様子

 今回の一連の調査・解決を陰で支えたのは「対象種の種類の特定」と「フェロモントラップによる客観的な分布調査」でしょう。前者は「何から発生するか」と「どのトラップ、または薬剤が効果的か」という判断材料として重要であり、後者は「的確に発生源の場所を絞り込む、ここは可能性として無い」という確かな情報を得るために欠かせません。

 毎回毎回、このようにレーダーやソナーで探知するように害虫を追跡・発見し、そしてスマートに駆除・解決と進めたら良いのですが、時には難儀な現場もあり、またそういった体験談と解決の決め手もいつかお話しできたらと思います。