ベッドの上で布団に丸まったまま出てこないミノムシが書くブログ

何年か前の秋、地元でランニングをしていた時のことである。歩道の端を歩く大きな芋虫が視界に入った。下の写真のような幼虫(=セスジスズメ)である。実に気持ちが悪い。しかし人や自転車に踏まれて死んでは不憫である。足を止めて近寄って素手で掴み、草むらに逃がしてやった。するとである。その一部始終を近くにいた小さな子供に見られていたようであった。緊張が走る。ランニング再開どころではない。ところがどうだ。開口一番「わぁ、芋虫さんよかったね〜」とのお言葉であった。何か全てが救われたような気分であった。

さて本題に移りたい。秋になると芋虫毛虫、そして蛾が身近なところに落ちていることが多くないだろうか。例えば道端に。あるいは家の周りに。筆者が住むアパートもそうである。先日は下の写真のように見事なサイズの蛾が廊下に落ちていた。エビガラスズメであろうか。グライダーのように立派であるが、一般人にとってはどうだろう。恐らく恐怖の対象でしかないかもしれない。

ところで蛾や芋虫毛虫が極度に嫌われる理由は何か?まず見た目が気持ち悪いことに尽きる。時には可愛いという真逆の評価が下される場合もあるが少数の意見であろう。次に毒がありそうだからとの声も聞こえてくる。この意見は見逃せない。毒を持つ、持たないものについて詳しく解説したいが途方もない分量になる。そこで今回は秋の時季に限定して述べたい。少なくとも下の写真のように「巨大な蛾」、それと冒頭に登場した「お尻にアンテナのようなものがある大きな芋虫」では毒を持つものはいない。手乗りさせても問題無いが、その際は周囲に誰かいてこちらを見ていないかどうかの確認が必要である。

また蛾や芋虫毛虫に限らないが、家の周りに迷い込んだ虫を野に返す行為には一つ注意がある。それはまかり間違っても人の家の敷地や畑の中、また人通りの多い場所へ逃がさないことである。筆者とて自宅の庭木に食欲旺盛な毛虫を放たれるとどう思うか。遺憾の意を表明するだけではおさまらないであろう。それと同様である。できるだけ野山の近くや人気のない場所へそっと放つに限る。多様性が叫ばれて久しい昨今ではあるが、ここは大多数の一般人の感覚に寄り添った行動をとりたい。

この他に公園や人家で秋に見かけるのが下の写真の芋虫である。これはツマグロヒョウモンという蝶の幼虫である。全身からトゲの生えた毒々しい見た目であるが何のことはない。ほぼ無害である。トゲに触れると少しチクチクするかもしれないが、後で腫れる・かぶれるということはまず無い。肌の弱い筆者が触れても問題は無かった。ただしこの幼虫はパンジーなどの花の葉っぱを食べてしまう。そのため庭の害虫になる点には注意が必要である。公園や人家で見かけると書いたのはそれである。植え込みやプランターに植えられたパンジーからも発生する。園芸がお好きな方は注意されたい。

以上、外で見かける秋の蛾や芋虫毛虫のことから最後は家の中のソレへと話題を変えたい。すなわち家の害虫駆除のお話である。冬が近づくと下の写真のような芋虫が家の中に出るという相談を受ける。見た目は黄色っぽくて毛も何も無いシンプルなものらしい。大きさもせいぜい1センチほどである。ただし家のあちこちに出没するようである。こんな時はノシメマダラメイガという蛾の幼虫を疑っていただきたい。

この幼虫は米や小麦を食べる食品の害虫である。他にインスタント麺やビスケットなど菓子類も被害に遭う。ドライフルーツや乾燥豆も同様である。乱暴に言えば乾燥した穀物、野菜、果物であればほぼ何でも餌にする。従って一般住宅でも普通に湧くことがある。その場合の発生原因はキッチンや物置に置いたままのお米、お茶っぱ、ぬか、保存食・・・こういったものであろう。ただ煮干しや鰹節、干し肉など乾燥した魚・肉類では発生ができない。

玄米から発生した例を上の写真で示す。なお黒くて細長い物体は成虫で、詳しく書けば交尾中の雄と雌である。さらに増えるつもりのようだ。恐ろしい。さて、こうして食品の袋の中で増え続けたノシメマダラメイガは何かの拍子に外へと出てくることがある。これは袋の口を緩く縛っているとか、幼虫が袋を齧って穴を開けたとか、色々な原因が考えられる。そしてある日家の中で奇妙な芋虫をひょっこり見かけ、これは何?となるのである。

加えて冬が近づくと虫たちは冬眠のことを考えなければならない。この幼虫たちも同様である。ではどのように冬を越すか?手頃な場所に繭を作り、その繭の中で冬を越す。上の写真はその繭で場所は一般事務所の部屋の中、天井近くの壁である。繭を作るのはこういったLの字になった角っこや段ボールの断面の中といった場所が好きなようである。またこの冬越しの時季は冬眠場所を求めて幼虫が活発に動き回るらしく、その過程で「家のあちこちで芋虫が見つかる」ということになるのであろう。つまり冬の前に家の中でこんな光景が見られるのは、この虫たちがどこかでたくさん発生しているということである。

では対策について触れたい。身構える必要は全くない。要はキッチンや倉庫など食品を保管している場所をチェックし、虫が発生していないかどうか確認するのである。そして虫が湧いているようなものがあれば密封して廃棄する。それだけである。対象は既に述べた通りだがお米や小麦粉、乾麺、菓子類、お茶っぱなどである。その中でも茶色っぽい砂のようなもの(=幼虫が出した糞)や、表面に薄く糸が張ったようになっているもの(=幼虫が吐いた糸が絡まっている)もが混じっていれば即刻処分である。また廃棄処分と併せて掃除機で清掃することもオススメしたい。

最後に、そういった掃除の最中に虫が飛び出して来た時はどうするか?ただ立ち向かうだけである。幸いノシメマダラメイガに毒はない。素手でひねり潰せば解決である。ただしスマートに対応したい場合は殺虫剤の出番である。スプレータイプで安全性により優れたものを虫に直接かけてやれば解決である。しかし、清掃をきちんと行ったのに発生が止まらない。こんな時は何か見落としがあるかもしれない。弊社までお問い合わせをいただければ幸いである。なお、ノシメマダラメイガという名前はすこぶる複雑である。筆者が慣れない喫茶店に入り、フラペチーノとなどと呼び慣れない単語で舌がもつれてしまうのと同様かもしれない。名前が覚えにくければ単純に「メイガ類」と言っていただいても問題ない。ところで筆者の自宅の米櫃は大丈夫だろうか。同じような虫が湧いていないだろうか。不安に駆られたところで本日は筆を置かせていただきたい。