蚊の羽音をカーステレオと呼ぶ男の物語

某日久しぶりに実家へ帰ったところ、待っていたのは庭にはびこる蚊の猛攻であった。長い出張疲れを癒すつもりの帰省であったが誠に遺憾である。急速に心の中に怒りが渦巻いた。瞳の奥にはグルグル巻きの蚊取り線香が映っていたかもしれない。もはや情状酌量の余地は無い。徹底抗戦である。そんな一般住宅の蚊の駆除について本日はご紹介したい。しばしお付き合いいただければ幸いである。
1. 蚊の種類を特定する
さて、蚊に限らず害虫駆除で大事なことは何か?それは相手の正体を知ることであろう。となれば、まず1匹捕まえて種類を特定しなければなるまい。そう思って庭に躍り出れば、こちらから探しに行くまでもなく蚊の群れが迎えに来た。好都合である。早速一番のろまなものに平手打ちを一撃して身柄を確保した。若干の怒りがこもったせいだろうか。いささか死骸は分解してしまったが、正体を知るには十分な状態でそれは手のひらに残った。

こうして捕らえた蚊の見た目を観察する。全体的に黒っぽくて、お腹などを中心にところどころ白い縞々模様が入る。これはヒトスジシマカであろう。一般的に蚊と呼ばれるもののの代表格である。では次にこのヒトスジシマカが発生するのはどこか?蚊といえば水のある場所という声が聞こえてくる。正解であるが、もう少し具体的な答えが欲しいところである。 次にそれを考えてみる。
2. 発生場所を突き止める
まずヒトスジシマカが発生するのは水たまりのような場所である。例えば庭であれば金魚鉢の中、蓮など水辺で育つ花を育てるため水を張ったままの鉢、また植木鉢のお皿に溜まった水などである。他に外にほったらかしたままのバケツやプランターがあればそこに溜まった水、落ち葉や土で排水溝が詰まってしまった洗い場の周りなども挙げられよう。

これらを踏まえて実家の庭を観察する。親の手入れが行き届いており綺麗だが、蚊の発生しそうな場所が無い訳でもない。中でもひときわ禍々しい雰囲気を放つものがあった。大きな水瓶である。曰く、魚を飼っているのではなく雨水と落ち葉が溜まるに任せているようである。不吉な予感が走る。すぐに中を覗き込んでみた・・・見つけたよ。中から無数のヒトスジシマカが現れた。間違いない。実家の庭ではこの水瓶が蚊たちの根城なのであろう。

なぜそう言い切れるのか?理由はこの水瓶の中身を見れば分かるに違いない。蚊の幼虫、いわゆるボウフラは水中の有機物を食べて育つ。具体的には落ち葉や泥、金魚鉢では魚が食べ残した金魚の餌なども当てはまる。雨水と落ち葉が溜まるに溜まった水瓶などボウフラの格好の生息地になるであろう。それを踏まえてこの重い水瓶を傾けて中身を適当な水槽の中に出してみた。重い、汚い、臭い、救いようのない作業であったが、その甲斐あって琥珀色をした不思議な水を得ることができた。

これを丹念に落ち葉、水、そして生息しているであろうボウフラに分ける。細やかな作業であるが虫の研究ばかりしていた学生時代に戻った気分になる。実にすがすがしい。気持ちが若々しくなった気がする。しかし、ふと水槽の水面に映る自分の顔を見れば、すっかり年を重ねたそれである。現実とは残酷である。

話を元に戻す。こうして分離したボウフラを桶に移して大雑把にカウントした。その数、200匹近く。おぞましい。詳細な写真を掲載したいところだが、見ると気分を害される方がいるかもしれない。私もお叱りを受けるかもしれない。上の写真が限界である。なお、ヒトスジシマカの雌が一生に産む卵の数は数十個から100個ほど。仮にこの200匹近いボウフラの半数、100匹が雌になるとすれば将来的な蚊の発生数は数千から1万。こう考えれば、水瓶1つの掃除といえど実に有意義であったと言える。
3. 対策の考え方
さて、こうして得たボウフラはどのように駆除すればよいか?簡単である。彼らは水中でしか生きられない。乾いた地面に水ごと流してしまえばよいのである。残念だったねと言い放ち、そしてカラカラに乾いた排水溝へと流す。傍から見れば、もはやどちらか正義か悪か分からない光景である。

ところで掃除をした後の水瓶である。せっかく中身を出して綺麗にしても、時間が経つと再び雨水と落ち葉が溜まり元の木阿弥である。定期的に掃除をしなければなるまい。実に面倒であるが、さりとて親に任すには酷である。ここは害虫駆除の世界で得た知識を活用して親孝行すべきであろう。つまり殺虫剤の出番である。最終的に殺虫剤のお話に帰結するのはこのブログの宿命である。

では今回選ぶ殺虫剤は何か?状況を整理すると、まず水瓶に今後も落ち葉と雨水が溜まりボウフラが再び出現することは避けられない。次にその後を冷静に考える。ボウフラが出現しても即座に影響は無い。その後成長したボウフラが成虫に育って初めて吸血の被害が起こるのである。であれば答えは明白である。成虫になる手前で効く殺虫剤を水瓶の中へ定期的に投下するのである。詳細は商品ページに譲るが、そういった効果を持つものにスミラブ粒剤が挙げられる。これを使い方に則って撒いてあげればよいのである。実にシンプルである。
4. エピローグ 殺虫剤の使い方は要確認
最後に余談を紹介したい。汚い水の中からボウフラをふるい分ける作業中のこと、大きなヤゴが見つかった。もちろん人には害が無い。後で掃除の終わった水瓶の中に返してあげてもよかったが1つ問題があった。上記で紹介した殺虫剤(スミラブ粒剤)は昆虫全般に効くのである。このヤゴも例外ではないだろう。トンボになる手前で死亡してしまう恐れがある。これは避けたい。今回は別に水槽を用意して移住させる措置をとったのであるが、殺虫剤を使う上でこのような基本的な知識の理解は極めて重要である。

殺虫剤の使い方の注意はラベルに記載されている用法用量を見れば分かる。しかし現実はどうだろう。本当に理解があっているのか不安に思うこともあれば、思わぬ勘違いから誤った使い方をしてしまうかもしれない。話題は逸れるが、料理の本を見ただけの知識で夕食を調理した私がとんでもない失敗作を作ってしまったのと同様である。詳しい人に経験を含めて聞いてからすればよかったと思うことは古今東西多々あるであろう。以上より、もし殺虫剤の使い方や選び方にお困りのことがあれば弊社までお問い合わせをと思ったところで本日は筆を置かせていただきたい。